きままなDIY

趣味のDIYの備忘録をメインに、気ままに書きなぐるブログです

オーディオラックの設計

オーディオラックやテレビボードをインターネットや家具屋で探したりしますが、なかなか格好いい製品がないんですよね。

仮にあったとしても10万円超えるものだったり、機能的じゃなかったり、手持ちのAV 機器が入らなかったりする訳です。

メーカー製のオーディオラックはかなり高額で、減衰効果を謳ってるものや、反響音を低減するものなど様々なんですが、正直「本当か!?」と疑ってしまいたくなります。

そこそこしっかりしたダサくないラックが欲しいだけなのに

と思っている人多いんじゃないかと思っています。。

というわけで、自分が欲しいオーディオラックを作れないか考えていました。

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※この記事は、オーディオラックの設計について、備忘録的にまとめたものです。なお、出来が良かったので追加で作成したものを某ハンドメイドサイトに出品しています。自作の参考にもどうぞ。


1.設計条件

コンセプトは、「低価格」+「すっきり」+「しっかり」 

なんかコンセプトだけ見ると大丈夫か、と思ってしましますがちゃんとしっかり丈夫なものにしていきます。

早速ですが、設計条件詰めていきます。

  1. シンプルかつすっきりとした構造にする
  2. ラックに収めるものは、レコードプレイヤー、CDプレイヤー、アンプの3点とする。
  3. 排熱を考え、フルオープンな構造にする。(背面を塞がない)
  4. アンプは、ミドルクラス相当のものを収納できる大きさとする。
  5. メンテナンスしやすいようにボルト留め構造とする。
  6. 棚板1層あたりの設計荷重は25kgとする
  7. 可能な限り、振動を考慮する。

こんなところでしょうか。7番目の振動はまぁ参考程度というか極力考慮する程度にしたいと思います。


2.構造詳細

早速ですが、図面です。コンセプトをもとに図面を引きます。

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最上段にレコードプレイヤー、中段にCDプレイヤー、下段にアンプを収納するように設計します。

2.1 レコードプレイヤー収納部分

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ラック最上段がレコードプレイヤー収納部分となります。レコードプレイヤーの大きいもので横幅500mm、奥行400mm程度はあります。製品により脚の部分位置等異なるため、可能な限り最上段はボルトの突起等なくしフラットな面にします。

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棚板に座繰りを掘り込んでワッシャーごと埋め込む案も考えましたが、どうしても段差が出てしまうため、極力フラットにすべく六角穴付き皿ボルトを採用しました。

2.2 CDプレイヤー収納部分

中段はCDプレイヤー収納部分になります。高さ的には、ハイグレードなものでも150mmを超えることは、なかなか無いようですので150mmとします。一般的な製品でだいたい100mm~130mmでしょうか。

2.3 プリメインアンプ収納部分

高さ寸法的にはミドルクラスまでだとだいたい150mm~180mm程度。プリメインアンプ収納部分を余裕みて高く設定しても構造的に弱くなるため、20mm程度の余裕をみて200mmに設定します。横幅も最大で500mmのプリメインアンプを収納できるように設計します。

下図はYAMAHA A-S1100の寸法図です。高さは157mm。もう1クラスアップすると高さが180mm程度になります。 f:id:khdo:20180717154228g:plain A-S1100 - 本体寸法図 - HiFiコンポーネント - ホームシアター・オーディオ - 製品情報 - ヤマハ – 日本 <

2.4 その他共通事項

設計条件に基づき、フルオープンな構造にするため、各棚板を支柱で支える構造にします。また、各棚板の寸法はは支柱位置等考慮して、プリメインアンプ、CDプレイヤーが収納できる多きさの横幅600mm、奥行400mmにします。
設計荷重は、25kgとしました。ミドルクラスのプリメインアンプで最大この程度です。 またすっきりとした構造とするため、支柱は可能な限り細くしたいのですが全体の剛性に影響が出る可能性が高いですので、ぎりぎりのところでM6ボルトを使用したボルト留め構造として設計することにしました。 後の材料や構造計算で触れますが、今回使用する材料は、コンセプトの1つとして低価格な面も求めているため、木材の棚板とします。

3.材料選定

3.1 棚板の選定

棚板の木材は、”硬い”木材とします。ということで、柔らかい針葉樹(スギ、パイン等)は候補から外します。広葉樹で低価格なものとしては、ゴム、タモが選択肢でしょうか。 参考までに、比重の比較です。

【針葉樹】
・スギ  0.38g/cm3
・ヒノキ 0.41g/cm3
・パイン 0.42g/cm3  (メルクシパイン)

【広葉樹】
・ゴム  0.66g/cm3
・タモ  0.69g/cm3

ゴムは、基本的に無垢材としては大きく板をとれないため、集成材の取り扱いとなりますが、価格が安価で比重も大きく強度的に期待できます。また、集成材の方が材料的に無垢材よりも性質が安定して扱いやすいです。 タモはゴムの1.5倍程度の価格差があり、機械的性質にその金額差を上回るメリットがないためゴム集成材を棚板の材料とします。 メーカー製オーディオラックやオーディオボードでもゴム集成材を使用する製品がありますので、材料的にはメーカー製と同等といえるのでは。。

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ゴム集成材
白くて、比較的淡い色彩の木材です。産地は東南アジアがメインです。

参考にラバーウッド集成材を使用したラック↓ 意外と高い。。


3.2 支柱の選定

シンプルですっきしとした印象とするため、支柱は可能な限り細いものとします。そのため、支柱は木材ではなく金属製の支柱としました。 候補としては、アルミ材、鋼材が安価で調達できそうですが、より硬い(ヤング係数が大きい)という視点で材料を考えると鋼材がベターだと判断しました。なお、使用する支柱はSS400の六角支柱(M6)とすることで設計条件の1つであるメンテナンス性を考慮しました。 なお、ステンレスは金額が張るため除外しました。支柱の防錆は四三酸化鉄被膜ですが、室内環境では十分ではないでしょうか。

支柱は両端メスであるため木材との接続は、M6の寸切りボルトで支柱とワッシャーで挟み込み締め付けます。支柱⇒規格(JIS,ISO)ワッシャー⇒特寸ワッシャー⇒棚板⇒特寸ワッシャー⇒規格(JIS,ISO)ワッシャー⇒支柱の順で接続します。棚板には、6mmの孔を開けておきます。 まとめると特寸ワッシャーと支柱で棚板を強固にサンドイッチする構造です。後で触れますが、支柱の締め付け力は支柱の回転角度で管理します。

ここで、特寸ワッシャーとは木材と支柱を強固に締め付けるために木材との接触面に配置する規格外寸法ワッシャーです。今回は直径20mmのものを使用します。 ワッシャーを2枚用いるのは、接合部に応力が集中するため特寸ワッシャーと支柱の応力伝達に配慮したものです。(実際のところ、そこまで曲げが発生するとは考えていませんが。。)

また、オーディオラックの脚部は、今後の拡張性も考慮して容易に取替可能なように袋ナット仕様にしました。後でスパイク等に取替も可能です。

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脚部については写真上から順に、棚板⇒寸切ボルト⇒特寸ワッシャー⇒規格ワッシャー⇒支柱⇒寸切ボルト⇒袋ナットとしました。


組み立てるとこのようになります。

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脚部


4.構造計算

計算するまでもないかとは思いましたが、簡易的に計算したものです。

4.1 材料特性

棚板はゴム集成材として、ゴムの木の物性値は以下の通り。  

・単位重量    0.73g/cm3  
・ヤング係数   11.8gkN/mm2  
・横ヤング係数  0.45gkN/mm2  
・曲げ強さ    97.8N/mm2  
・横圧縮強さ   9.5N/mm2  
・せん断強さ   10.4N/mm2  

支柱は、正六角形断面の鋼製支柱で、物性値は以下の通り。

・材質は、SS400  
・ヤング係数   205×103N/mm2  
・せん断弾性係数 79×103N/mm2  
ポアソン比   0.3  
・密度      7.85×10^-3g/mm3  


4.2 重量の算出

4.2.1 棚板重量の算出

ゴム集成材の棚板寸法は、400mm×600mm×25mmであることから、
400×600×25×7.3×10^-7=4.38kg
なお取り付けのため、φ6㎜の孔を棚板1枚当たり4か所差し引いて、
4.38kg-(b/2)2×3.14×25×7.3×10^-7=4.3794≒4.38
孔引き後の重量は4.38kg/枚
従って、棚板3枚当たり4.38×3=13.14㎏

4.2.2 3柱重量の算出

支柱は、長さの異なる3タイプを使用します。

  1. 150mm×4本
  2. 200mm×4本
  3.  25mm×4本

正六角形の断面積は、3/2h2tan30°で計算できますので、
断面積A=3/2×102×tan30°=86.6mm2

  1. 150mmの支柱1本あたりの重さは、86.6*150*7.85*10^-3=101.97≒102g
  2. 200mmの支柱1本あたりの重さは、86.6*200*7.85*10^-3=135.96≒136g
  3. 25mmの支柱1本あたりの重さは、86.6*25*7.85*10^-3=17.00≒17g

それぞれ、支柱4本ずつ合計すると、支柱合計1.02kg

4.3 棚板の設計

4.3.1 棚板のたわみ

 ラックに乗せる機器で最も重いものは最下段に設置するプリメインアンプとして、その質量は25kgとします。モデルは単純ばりとして取り扱い、支間中央に集中荷重として載荷します。

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単純ばり
単純ばりの支間中央でのたわみvは、v=PL3/48EIで計算でき、

v=25×9.8×5203/{48×11.8×103×(400×253/12)}
 =0.1168
 ≒0.12mm

参考程度に、たわみの一般的な許容値は建築関係で支間長に対して250~300分の1程度が一般的。
今回は、より強い構造ということで、1000分の1程度を許容値と仮定して、
v=0.12mm < 520/1000 = 0.5mm

余裕ですね。

4.3.2 棚板の曲げ強度

棚板の曲げモーメントは、支間中央で最大となり、その値は、
M=1/4×PL=1/4×25×9.8×520=31850N・m

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M図
板内部の曲げによる応力は、σ=M/I×yで与えられます。
σ=31850/(400*253/12)×(25/2)=0.76N/mm2
ゴム材の曲げ強さは、97.8N/mm2であるから、作用する曲げによる応力は許容値の0.78%となります。
こちらも余裕ですね。

4.3.3 棚板のせん断強度

棚板のせん断応力度は、σ=P/Aにより、
σ=12.5*9.8/(400×25)=0.012N/mm2

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Q図
ゴム材のせん断強さは、10.4N/mm2であるから、作用するせん断応力は許容値の0.1%となります。
余裕です。ここまで余裕があると材料がもったいないと感じてしまいます。

4.4 接合部の照査

編集中です。接合部に作用する曲げモーメントをラーメン構造と仮定して計算しました。結果は満足しています。

5.振動特性(参考)

4.1 棚板の振動

 棚板が鉛直方向に振動するケースを想定します。
棚板を単純ばりとして取り扱うと、単純ばりの曲げ振動は、
固有円振動数 Pn=(λnl)2P0 (λnlは、n=1で3.142、n=2で6.283、n=3で9.425)
ここで、P0=1/l2
(EI/m)1/2 
はりの曲げ剛性EI、支間長I、単位長さ当たりの質量mを入力し、
固有振動数 fn=Pn/2π から、

1次モードの固有振動数 134Hz
2次モードの固有振動数 539Hz

と算出されます。  なお、この振動方向は、棚板が鉛直方向に振動するケースを想定した計算ですが、どちらかといえば、レコードの回転振動、スピーカーの振動方向、その他機械的に駆動する部分を考えると、その振動方向は水平方向なので、鉛直方向に揺らされることはほとんどないものと思っています。

4.2 オーディオラック全体の振動

3自由度の運動方程式を解いてオーディオラック全体の固有振動数を計算します。 記号の添え字がたくさんあるため、PDF形式としました。


ということで、

1次モード 0.43Hz
2次モード 1.03Hz
3次モード 5.35Hz

となりました。

あくまで、参考までの検討でした。